道路運送法に違反してマスクの着用を拒んだ乗客を途中下車させたとして、国土交通省中部運輸局は1日、乗り合いバス事業者「伊豆箱根バス」(静岡県三島市)に対し、中型バス車両2両の使用停止を命じる行政処分を出した。期間は25日間。マスク着用をめぐるトラブルが原因の乗り合いバス事業者の停止処分は全国で初めてという。
局や同社によると、4月7日午前10時10分ごろ、観光施設「伊豆・三津シーパラダイス」(同県沼津市)と伊豆長岡駅(同県伊豆の国市)を結ぶ路線バスで、運転手が伊豆の国市内の停留所から乗車した客がマスクを着用していないことに気づいた。車内放送で着用に協力を求めたが、応じないため、別の停留所を通過した地点で降ろしたという。
乗客側から苦情が寄せられ、局が4月22日、同社三島営業所に監査に入った。正当な理由がなく、拒絶することはできないとする道路運送法に違反すると判断。事業者として運転手の指導監督が不適切だったとした。運送約款で拒絶できる理由として明記していなかったという。
同社によると、この路線では沿線の大学病院を利用する乗客が多く、当時は25人が乗車していた。運転手は社内の聞き取り調査に対し、他の乗客に配慮したと説明した。降ろした乗客は同社が手配したタクシーで目的地に向かったという。
予備車両もあり、処分後も路線バスの運行に影響はないという。広報担当者は「運転手が独断で対応したが、今回の対応は誤りで、指示も徹底していなかった。再発防止に努める」と話す。
中部管内では、新型コロナの感染拡大を受け、タクシー事業者が運送約款を見直すなどしてマスク着用をめぐる対応に乗り出す一方、バス事業者ではあまり進んでいないという。(床並浩一)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル